脳の自然な機能を活用する

人間の脳は不思議だ。たとえば、大人になってから英語学習した人は日本語と英語で別々の脳領域を使用しているが、幼児の頃に海外で暮らしたネィティブ・バイリンガルは、両国語とも同じ領域を使って会話してるらしい。その境目は だいたい7〜8歳までとのことだが、脳物理学では赤ちゃんに近いほど、どんな微妙なニュアンスでも完全に聞き分けられると証明されている。つまり、人間は生まれながらにどんな音でも聞き取れるはずなのだが、大人になるにつれ、生活の中で不必要な音は次第に削除されていき、自動的に整理されてしまうのである。

ここまで極端ではなくとも、筆者も生活に支障が出ない、または相手に失礼がない程度で この脳機能を活用している。顧問先や生徒たち、頻繁に会う方以外の名前は覚えない。道やお店などの地理も記憶しない。過去のどうでもよい論理や事象は消去する。つまり 役に立たない情報は整理するか、消してしまうことにしている。もちろん、嫌な想い出も同様だが、その一例を述べると、寝ている間の脳の自動整理機能を活用して「あれって何だったっけ?」「あの人誰だっけ?」などと曖昧にしたまま、考えたり思い出すのをやめて放置するのだ。そうすると、脳は睡眠中に重要ではないと判断し、自動的にその関連事項ごと整理したり消去してくれるわけである。また、皆さんにも経験があると思うが、感情つきで物事を感じ取ってしまうとロングメモリーになるので、嫌な出来事ほど冷静かつクレバーに対処するように心がけたい。

世間には『後天的に入力されたソフトの質や量が問題』といった誤解が見受けられるが、重要なのは、むしろ生まれながらのハードの能力は同じでも その取り扱いを間違うと、できる仕事量に格段の差が出るという点だろう。誰にも忘れてはいけない記憶と、消してしまいたい不必要な情報がある。短い人生なのだから、最先端の脳科学を参考に、自らの取扱説明書を熟知した上で、記憶も機能的かつ有効に使いたいものだ。