年金消失のAIJ - 年間57兆円のデリバティブ取引

123社分の年金資金2000億円が消えた。政府と同じく『消えた年金』を運用していた AIJ投資顧問が一昨年に実施した、先物取引とオプション取引の総額は、じつに約57兆円にのぼるらしい。証券取引等監視委員会金融庁は、AIJが高い利回りをうたって実態と異なる虚偽の説明をしていた可能性もあるとして、悪質な行為がなかったか、刑事告発も視野に調べるそうだが、このぶんだと その他の年金資金を運用する投資顧問会社約260社に対しても、さらに規制が厳しくなることだろう。また次々 同じような事態が発覚するかもしれない。

しかし そのじつ、AIJは89年の設立以来、一度も証券取引等監視委員会の定期検査を受けたことがないという。今回の問題が発覚したきっかけも、AIJの「高収益」に疑問を感じた外部からの指摘によるものだ。これを受けて、当局の監督体制のあり方も問われそうだが、投資顧問会社は、07年に認可制から登録制に変更された事情もあり、ここ数年で投資会社が急増した背景をもつ。それゆえ指導が追いつかなかった現状もあるのではないかと囁かれている。

こういった いわゆるデリバティブ(金融派生商品)取引は『丁半博打』に似ていて、一瞬にしてすべてを失う可能性をはらんでいる。自分たちのような業界では「オプションにだけは手を出すな」が常識だ。しかし、許可の問題よりも、そうせざるを得なかった【年金制度の矛盾】のほうにこそ言及していくべきだろう。国内金利の低迷や相次ぐ世界金融危機によって、企業年金は軒並み運営不全に陥っているが、それでも退職者たちは当然のように支払いを求めてくる。ないものは出せないから、企業や年金を預かる側は、仕方なしに 回るだけのリターンを求めて 高リスク商品に手を染めるといった悪循環が生じてしまうのだ。支払う側だけでなく もらう側においても、このような現実無視を続けていけば、結果的に最後は破綻して全員が損をする。投資は個人責任であり、そこに絶対はない。これは銀行預金にしても、保険や年金でも同様である。まずは、権利や義務より 現実をしっかり見据えることが重要に思われる。