てんかんの一因解明か? 子ども熱性けいれんとの関連示唆

生後まもなく 発熱が原因の「複雑型熱性けいれん」を経験すると、脳の海馬に障害が生じて、大人になっても てんかん発作を起こしやすくなることが、東大の研究チームによるラット実験で証明され、先日 米科学誌「ネイチャー・メディシン」で発表された。人間でも乳幼児期に熱性けいれんが起これば、同様の現象が生じる可能性もあり、医学界では「海馬の障害を防ぐことが、てんかん予防につながるかもしれない」と期待が高まっている。

実験結果の経緯を拝見して 筆者は、熱性けいれんを経験したラットの海馬を調べたところ「神経細胞が本来の位置とは違う場所に移動しており、過剰に興奮しやすい状態になっていた」という箇所に注目した。つまり、必ずしも発熱が原因でなくとも、何らかの要因で【海馬の神経が別の位置に移動する現象】が引き起こされたなら、同じことではないか?というふうに感じたわけだ。 

ご存知のように、海馬は大脳辺縁系の一部で 記憶や空間学習能力に関わる脳の器官だ。虚血に対しては非常に脆弱で、アルツハイマー病における最初の病変部位としても知られている。心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールが分泌されるが、これが継続すると海馬の神経細胞が破壊され 全体が萎縮する傾向もみられるという。これまでの経験的な治験観察によれば、てんかん発作を持病に持つ患者さんには、微熱による慢性的な体のだるさや 著しい空間把握能力の欠如といった所見も見られたし、発作が生じる前後には 血中酸素量の低下なども計測されていた。つまり、それらは上記の海馬が機能不備を起こした事象と見事に一致しているわけである。

そう考えていくと・・・もしかしたら、上記の発症要因には、いま流行のゲーム脳などによる 慢性的興奮状態での擬似的発熱も含まれるかもしれないと思えてくる。そういった可能性に着目したのであれば、てんかんに苦しむ患者さんに対しては、しっかりしたカウンセリングと仮説に基づいて行う脳のピンポイント検査なども必要になってくるだろう。要するに、脳の記憶や空間把握能力にくるいを生じさせた原因を究明しなければならないのだ。しかし、こんなことを想像してみても、脳神経外科と各種内科のように、現在の分業化された医療の世界において、こういった統合的システムの実施はかなり難しそうである。いつも科学の発展を妨げてきたのは、過去に便宜上採用されてきた 古い古い慣習にこそあるような気がしてならない。医学界には 一刻も早く慣習より科学的現実を重視する業態へと進化してほしいものである。