高度なかけひきが建設的な対話を生む

中国各地で反日デモが激化。一部が暴徒化し、日系企業の工場が放火されたり、商店やスーパーが破壊や略奪行為を受けてるらしい。これに対する 国内メディアの論調は おおむね以下のようなものだ。

「中国当局がデモを容認した背景には、胡錦濤国家主席が野田佳彦首相とAPEC首脳会議で会談した直後に、日本政府による尖閣諸島国有化の決定がなされたことを受けて、中国国内の保守派が一斉に弱腰外交と批判し出し、胡政権はメンツをつぶされた形となった。ほどなく 温家宝首相と李克強副首相が対日強硬発言を行い、それに乗じた 大衆の動きが活発化している。つまり、このデモは 内政問題から派生し、中国政府が容認した上で行われたのであり、かねてから言論や集会の自由を制限されていた民衆が、反日を口実に一気に不満を爆発させたものである。また、野田政権は尖閣の施設整備などを行わない方針を示しているが、日本では近く政権が交代する可能性があり、尖閣に対する次の政権の対応は不透明である。よって中国政府は今回、激しい反応を示すことで、次期政権を牽制する狙いもある。さらに中国共産党内部では、5年に1度の党大会を1カ月後に控えて権力闘争が激しくなっていて、民衆の不満を外に向けさせ、ガス抜きを図る思惑もあるようだ。しかし ただ放置すればデモが暴走して統制不能に陥る可能性もあり、中国当局もじつは苦しい立場に追い込まれているだろう。」

中国政府も苦慮している。もちろん それはそうかもしれない。だが 物事はそう単純ではないし、こちらに都合の良い解釈だけで現状を正確に読み取れはしないだろう。もうかれこれ ずいぶん前の話になるが、筆者は 中国で行われたビジネス目的のある会合で、数週間 中国の要人と共に過ごしたことがある。彼は普段とても温厚でフレンドリーだったが、ある外交問題に話題が及ぶと まるで別人のように激高し、多くの日本人の前で、現実的に検討されている 対日本に関する戦争シュミレーションを語りだしたのだ。その勢いに唖然として、周囲の財界人はみな黙り込んでいたが、筆者は そんなんじゃダメだと思い、一人だけ「もっと建設的な方法がある」と真っ向から意見を述べてみたのだ。その場の雰囲気からすれば、まさに凍りつくような空気だったが、しかし それからというもの「君は面白い」と、相手にはずいぶん気に入られて、滞在中 何度も頻繁に意見交換の時間を持った経緯がある。

対話とは「お互いが正当性を主張するだけの」裁判のようなものではない。ましてや 国際間の争いが第三者の裁量で決着したためしはないから、そんなんじゃ最終的に声の大きいほう(力の強い側)が勝つか、泥沼の争いが待ち構えているだけである。すべては選択の問題なのだから、白黒をつけることに あまり意味はないだろう。むしろ建設的互恵関係を築きたいなら、相手の出方に振り回される前に「もっと具体的かつ明瞭で現実的な お互いにとってベストな策」を提示し、誰が見てもそれ以外の選択はないと得心させられるよう こちらから攻めていくべきではなかろうか。もし それが今思いつかないとしても、是が非でも何としても、知恵を絞りひねり出さなければならないのだ。それができなければ、どんな結果になろうと両者とも負けには違いないのだから。そんな 高度なかけひきこそが、建設的対話を生み出す唯一の手段かもしれない。