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BOSE社にみる経営のヒント

ボーズ社(BOSE Corporation)は、音楽好きなら誰もが知る・・米国へ本社を置く 高級スピーカーのブランド企業だ。最近は、音響機器だけでなく、産業用機器や医療・自動車関係などの研究開発までを手広く手掛けてるが、そのBOSEの創始者で会長兼マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授でもある アマー・G・ボーズ氏が先日他界された。

 このボーズ氏のスピーカー開発に関するエピソードには、たいへん興味深いものがある。彼は研究のかたわら聴いていた音が、コンサートホールのそれとはまったく異なることに気づいた。そこで「100%の原音と、現実にスピーカーから再生される音の違いの研究」へと着手し始めることになる。MITの技術を駆使して、音響工学とは一見まったく無関係に思える 物理学や流体・空気力学・音響心理学などの解析から、仲間とともにはじき出した結論は【人間の聴覚は 直接音が11%で間接音が89%】というものだった。「この音響エネルギーのバランスを、ダイレクト・リフレクティング理論と名付けて、コンサートホールの臨場感を忠実に再現しよう」とした試みそのものがBOSE社の姿だったというわけだ。

ここでの『経営に対する教訓』はふたつある。BOSE社の利益が、おもに技術開発費用にあてられていたという点。もうひとつは、物事の解明に多様な視点を用いたという点である。

企業の目的とは何か? それは社員やその家族を養うために利益を上げることではない。もしも最も重要な事象をそのようなところへ置いていたなら、そんな企業に未来はないと言えるわけで、したがって、利益を技術開発へ振り向けるのもありなのだ。大切なことは、あくまで その目的である。そして、経営においては、経済学やマーケティング論などの経営関連事項だけを駆使していても始まらないはずで、むしろ経営にこそ、各種力学や物理学・心理学・病理学などを持ち込むべきなのである。ようするに、経営を行うのも人なら、お客様もまた人であり、人間研究と自然科学の応用なくして、経済を語ることなかれ!  ということである。

企業のコンサルティングを実施する際には、新しい息吹を吹き込まねばならない。使い古された過去の学者の経済論や分析なんてもはや役立たないが、それは曖昧なメンタル論でも同様であろう。科学は人文社会や常識を遥かに超えてるがゆえに、どれをチョイスして、どのように活用するかは個人のセンスに託されるが「その要素が多ければ多いほど現実に近くなる」のは、まぎれもない事実であろう。よって、経済ひとつとっても、その多様性の有無が問われてくるのは当然の事のように思われるが。