黒字化でも続くシャープの綱渡り経営

先日 シャープが四半期決算を発表・・・5四半期ぶりの営業黒字転換を達成した。その理由として、経営サイドは、IGZO液晶を搭載したスマートフォン携帯【アクオスフォン】の販売好調を挙げ、昨年12月「販売台数ランキングでiPoneを抜き一位になった」と強調する。たしかにこのスマートフォンは『電池が従来品の2倍長持ちする省電力』を売りに業績を伸ばしているが、市場関係者からは「年間売り上げ 2.5兆円の会社が、営業黒字 26億円では いかにも心もとない」といった声が聞かれたようだ。

決算の中身を詳細に検討すると、業績改善に大きく寄与したのは、以前に実施した『在庫評価減や生産設備の減損』であって、その額は約1100億円にものぼる。このように 企業というものの業績なんて、会計処理次第でどのようにでもなるわけで・・・とくに日本の場合は「右へならえ」の傾向が強いので、みんなが赤字なら そのように処理し、黒字になってくれば どこもかしこも黒字にしがちなのだ。つまり 今はこぞって黒字発表だから、問題はこれからということになるだろう。

実際、シャープの今後は複雑である。受注したiPone5用のパネルは、アップル側の生産調整を受け、昨秋ピーク時の半分以下に落ち込み、くわえてiPad用パネルの生産は12月以降ぴたりと止まって再開のめどさえ立ってないらしい。現在止まったラインで仕方なく生産してるのが「韓国サムスン電子向けの32型テレビ用パネル」では、いかにも『安値受注の採算度外視経営』という印象は拭えない状況だ。しかし、製造業というのは設備投資に資金がかかるから「少々の売却損よりキャッシュがほしいもの」 だからこそ、たとえ赤字でも とりあえずの入金を重視して自転車操業を続けてしまうというわけである。

この一連の報道をみて、今から20年ほど前に 製造業大手をコンサルティングしてた頃を思い出した。初日にヘルメットをかぶって工場内を視察した時点で「なんて無駄な人員が多いのだろう」と驚愕したものだ。その夜当然 社長に尋ねたのは「なぜ 大ナタを振るって人員削減しないのですか」ということだが、返ってきた返答を今でも覚えている。「こういう大きな工場には、その地域の雇用やインフラを確保するといった使命もあるんです。」 なるほど、その街に根付いた経営には 流通やサービスとは異なる側面もあるのだなぁ〜と思ったものだ。シャープの他にも、日立やトヨタなど その地域と一蓮托生の企業はたくさんある。いくらグローバル社会といえども、そう簡単には 合理化とか新しいマーケットへすんなり移行できないところもあるのだ。それぞれの企業形態はバックボーンによって決まってくる。いずれにしろ仕事だけでなく、その街や市の行方まで背負わねばならないのだから、経営者はたいへんだが、シャープにも是非とも頑張ってほしいと思う。